好きにならなければ良かったのに
新郎が社長子息という事もあり二人の初々しい姿には似合わず盛大な結婚式となった。
世間一般的に行われる結婚式と同じ様に、二人の門出を祝う祝辞に始まり大勢の祝福に駆けつけてくれた招待客へのキャンドルサービスや夫婦二人の初仕事のケーキ入刀、二人の生い立ちビデオ上映、招待客らの歌や踊りやらと会場を賑わせる披露宴だった。
予定通りに挙式と披露宴を済ませた二人は着替えを済ませると式場を後にした。
そしてその夜二人は新婚旅行へ出かける為に空港近くのホテルで一泊する。それが、二人にとっての初夜となる。
結婚式場からホテルへ向かった二人。美幸はかなり緊張した夜となる。
ホテルで幸司と二人だけの夕食を食べることになるのだが、初夜となるホテルでの夕食にあまり食事が喉を通らない。
「緊張している?」
「……」
恥じらう美幸は頷くのが精いっぱいで、声に出して何と言えば良いのか頭がクラクラしそうだった。幸司に優しい瞳で見つめられると、今日の日がまるで夢か幻かとそんな気分で現実味のない空想の世界にいる気分の美幸は、これから起こる幸司との素敵な夜に胸を膨らませる。
美幸の緊張を感じた幸司は食事を早めに切り上げ、早く二人だけになって美幸の緊張を解してやろうとした。けれど、逆にそれが美幸にとっては緊張が高まるばかりで二人だけでホテルの一室にいることが恥ずかしくて幸司の顔さえ見れなくなっていた。
そんな美幸に「可愛いね」と、いつもの様に囁いては美幸を抱きしめる。そして耳を擽るように「お風呂に入る? それともベッドに入る?」と訊かれた美幸の顔は茹蛸の様に赤く染まる。