好きにならなければ良かったのに
幸司は下着姿になると恐る恐る美幸が眠るベッドへと入る。幸司の重みでベッドが沈み込んでも美幸は眠ったまま気付かない。スヤスヤと寝息を立てる美幸の顔を覗きこむ幸司は、目尻に涙の跡があるのを見つける。
「泣いてたのか?」
美幸の体を少し抱えるように抱き上げ、腕を美幸の頭の下へと入れ込み肩を引き寄せては美幸をギュっと抱きしめる。自分の胸にしっかり抱きしめると病院での美幸の義母のセリフを思いだす。
『美幸は妻としてしっかりやっていますか?』
義母にまであんな不安気な表情をさせてしまったと、幸司は美幸を抱きしめるその腕に力が入り、自分の胸に美幸の顔をギュっと押し当てる。
「ん……」
力強く抱きしめられて息苦しく感じたのか、美幸がもぞもぞと幸司の腕の中で動く。美幸は両手を幸司の胸に当てては押し退けようとする。
「美幸?」
幸司が声をかけても美幸の反応はない。腕の力を緩め頭を抱え込む様にし顔を上へ向けさせるが、美幸はぐっすり眠っている様にしか見えなかった。目尻に見える涙の跡にキスしペロリと舌でその跡を舐め取る。
「……ん」
触れられている感覚はあるのか、美幸の微かに反応するその様子に幸司はクスッと笑みを浮かべる。
「いつもこんな風にあどけない顔をしてくれると可愛いんだが……」
抱きしめる頭を引き寄せ美幸の唇へキスをする。啄むような軽いキスを。何度かキスをすると湿ったその唇から甘い吐息が漏れる。
「起きているのか?」
何となく美幸が目を覚ましている様にも感じる幸司は、僅かに開くその唇に舌を入れ込んでは口内を探る。最初こそ熱い舌は動きはしないが、舐め取られるその舌に次第に反応を見せると、美幸は本当は目を覚ましていて幸司に寝た振りをしているのではないかと思えた。
「起きているんだろう?」
唇を離した幸司は美幸の背中へと腕を回し、その体をグイッと力任せに引き上げる。しかし、眠る美幸の体は力が入らず幸司の胸へと寄りかかる。
「美幸」と何度も名前を呼びながらキスを続ける幸司だが、いつの間にか睡魔に襲われ美幸を抱きしめたまま眠ってしまった。