再会は、健康診断で。

『かーえちゃん、俺のいない隙に誰と電話してんの? こんないい男が口説いてるのに、ひどいな』


いきなり聞こえてきた低い明らかに男のものなその声に、すっと腹の底が冷えていくのを感じる。


かえ、男といる? 口説いてるって、かえのことを?


「……かえ? え、今誰といるの?」


動揺している俺の声を嘲笑うかのような男の笑い声が聞こえてきて、視線が揺れる。


『黒崎さん、なにふざけてるんですか。携帯、返してください』


かえの動揺した声が聞こえる。いったい、どういう状況なんだ? 一緒にいる男に携帯をとられている?


ダメだ、なんかうまく頭が回らない。


『かえちゃんいい匂いするね。柔らかいし、かわいい』


その男の言葉に、今度は腹の底がかあっと熱くなる。なんで、そんなこと……。昼間に想像してしまった、知らない男がかえを抱きしめている姿が脳裏をよぎる。


「かえ、やっぱり……」


今、かえと一緒にいるのはきっと高倉さんと結城さんが言っていた同じ会社のかえに好意を寄せてるっていう人だ。



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