再会は、健康診断で。

本当は相手の男が誰かなんてどうでも良かった。俺が知りたいのはそんなことじゃない。ただ、いきなり核心をつくのが怖かっただけだ。


『会社の、先輩。性格が悪い人で、本当に悪ふざけされただけなの』


その人となんでふたりでいたの? ふたりで今までなにしてたの? かえはその人のことどう思ってるの?

いつもだったら迷いなく聞けるのに、今はそれを聞くのが怖かった。


「その人、かえに好意を抱いてた人でしょ。かえの理想の、年上の落ち着いた人なんでしょ」


年上で、落ち着いた人が好みだと言っていたかえ。俺はかえの理想とは真逆だ。落ち着きがないし、我慢もできない。かえへの想いだけは誰にも負けない自信がある。だけど、それだけだ。


どんなに俺が想っていても、選ぶのはかえだ。俺はかえに選んでもらえる自信がない。


『だからふたりで食事に行ってたんじゃないの? 俺とその人のこと、比べてた?』


卑屈すぎるその言葉に、自分で笑ってしまう。


かえと一緒にいると楽しくて、かえも同じ気持ちだと思っていた。でもそれは、俺の自惚れだったのかもしれない。


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