神様修行はじめます! 其の五
 その瞬間、自分の中身が『無』になった。


 炎の中に飲み込まれるっていう、超異常な状況に放り込まれて、どうやら貧相な頭脳が一気にキャパ越えしたらしい。


 頭と心が大爆発して、カラッポになって機能停止して、あたしはグラリと仰向けに倒れていく。


 スローモーションみたいにゆっくりと視点が変化していって、ドサリと床に横たわってしまった。


 …………。


 …………。


 ……あれ? あたしまだ、生きてる……?


 あたしは、何度も目をパチパチさせながらキョトンとしてしまった。


 間違いなく炎の中に取り込まれてしまっているのに、なぜか痛くも痒くもない。


 いや、痛くも痒くもないのはともかくとして、炎のド真ん中にいるのに熱くないってのはどういうこと?


 あたしの体、燃えていないの?


 仰向けに倒れたまま、自分の両手をゆっくりとかざして見たけれど、べつに着火している様子はない。


 してたらしてたで大変だけど。


 そういえば炎に取り込まれる寸前、門川君がなにか叫んでいた気がする。


 なんて言ってたっけ? ええと……。


『恐れるな。意思疎通しろ』


 …………。


 意味不明。


 これだから頭のいい人って困るよね。


『自分が分かることなら、他人も分かって当然』みたいな、レベルの高い発想の押し付けはやめてほしいよ。この非常時に。
< 471 / 587 >

この作品をシェア

pagetop