神様修行はじめます! 其の五
 そんなことをボンヤリと考える余裕があるのが、不思議といえば不思議。


 炎の向こう側から、あたしの名前を絶叫している仲間たちの声がボンヤリ聞こえてくるけど、まるで水中で聞く音みたいにハッキリしない。


 あたしの鼓膜は、炎が激しく燃え盛る音によって占領されてしまっている。


 この音、すごく、心地良い……。


 気がつけばあたしは、ぼうっと霞む意識の中で、穏やかに微笑んでいた。


 全身火だるま状態だってのに、なぜかぜんぜん怖くない。怖いどころか安心してる。


 自分を包む炎を見ていると、まるでお母さんの胎内でまどろんでるみたいに、心が落ち着くんだ。


 この炎の揺らめきは羊水だね。あたしを守り、育む物だ。


 ここは、あたしが還る場所。あたしが永眠り、新たな命が生まれる場所だ……。


 あたしは、輝く炎に向かってゆったりと手を伸ばした。


 心はとても穏やかで、雪のように真っ白で、夢見心地。


 限りなく無で、どこまでも満ちている。


 あたしの腕に引き寄せられるように、豊かな色彩の炎が絡まり、戯れ始めた。


 その澄んだ煌めきと、透き通る質感から伝わる純粋さに、心から見惚れてしまう。


 炎、お前は美しい。


 世界の源。命の極限。
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