神様修行はじめます! 其の五
「天内君、凍雨君の様子はどうだ?」


 庭先に立ったまま、門川君が聞いてきた。


「あ、うん。完全にバテて気を失ってるけど命に別状はないと思う」


「そうか。申し訳ないが彼には自力で自然回復してもらおう」


 さすがの門川君も大技連発で疲れているんだろう。治癒術の発動は控えた方がいい。


 凍雨くん、ごめんね。おとなしく休んでいればそのうち元気になると思うから、ちょっとそこで気を失っててね。


「絹糸、お前はどうだ?」


「見ての通り、我も我が子も生きておるわい。お世辞にも無事とは言えぬが」


 子猫ちゃんと寄り添い合っている絹糸は、まだ傷が癒えきっていないみたいで、腹部に深い裂傷が見える。


 子猫ちゃんはピタリと絹糸にくっついたまま、昏々と眠ってしまっている。


 さすがに蘇生した直後では元気ハツラツというわけにはいかないんだろう。


 それでも力を振り絞って治癒の術を発動したんだから、たいしたもんだ。さすが絹糸の子だ。


 そんな九死に一生を得たふたりに、門川君は素っ気ない。


「ふたりとも生きていてなによりだな」


「めんぼくない。負うた子に教えられて浅瀬を渡る……じゃな」


「……ふん」


 恥じ入るような絹糸に、門川君は背中を向けたままなにも答えない。


 代わりにあたしが質問した。


「ねえ絹糸、それどういう意味? 追われてるタコが、誰に何を教えられて海を渡るって?」


「……まあ、我もまだまだ未熟者。ということじゃよ」


「絹糸、タコなの?」


「ネコじゃわい」


 いつも通りの調子で切り返してきた絹糸が、なんだかちょっと嬉しそうに微笑んだ。
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