神様修行はじめます! 其の五
 重力が一瞬で変化した。


 目に刺さるような光に包まれたあたしの全身が、いきなりビタッと床に張り付く。


「……!?」


 う、動かない! まるで瞬間接着剤で完全に固定されたみたいに、指一本動かすことができない!


 体全体に信じられないほどの圧力が加わって、脂汗がドッと噴き出た。


 背中に相撲取りでも乗っかってんじゃないのかってくらい、ものすごい重みで上から体を押し潰されて、息が止まる。


 ミリミリと全身が軋む音がする。骨も、内臓も、急激な環境の変化に悲鳴を上げていた。


「ぐ……う、うぅー……」


 圧力のせいか、血流がおかしくなってる。頭に溜まった血が行き場を失い、血管が破裂しそう。


 唸り声を上げたいのに、肺が圧迫されてるせいで、苦痛の声すらまともに出せない。


 体、ペシャンコに、なる。


 息……。とにかく息、しないと……あたし、死ぬ……。


 死にもの狂いでなんとか息を吸い込んだら、肺が燃えるようにガァッと熱くなった。


 火を直接押し付けられたみたいなひどい痛みに、せっかく吸った空気を全部吐き出してしまう。


 なにこれ! 空気の中に変なモノが混じり込んでる!


 咳き込みながら涙目で周りを見たら、視界全体がどんより濃厚に澱んでいた。


 硫黄みたいな強烈な臭いをした空気が、ノイズのように入り乱れている。穢れた禍々しい気配が、未知の領域からこちら側へどんどん侵入しているんだ。


 これは文字通り、地獄だ。こんな場所が現世と繋がったら、世界は終わってしまう!


「ぐはっ……! ハッ……ゲホォッ!」


 眼球が飛び出そうなくらい重力が増し、骨は限界の悲鳴を上げ、開いた唇からはもう吐く息すら無い。


 顔は極限の苦しみのあまりに燃えるように熱いのに、頭の芯がスーッと暗く冷えていくのが分かった。


 あぁ、意識が……命が、途切れていく……。


 も、ダメ……だ、あたしの人生、今日で終了……。
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