神様修行はじめます! 其の五
―― ギュンッ!


 急速に空気が収縮する音がした。


 同時に、なぜか圧迫死寸前だった体が、重圧から解放された。


 あたしは床に寝そべったまま、無我夢中で「ぶはっ!」と大きく息を吸い込んだ。


 おお! 体が軽やか、息もできる! 酸素おぉぉ!


 ……あ、しまった。そういえばこの空気って吸っちゃマズイんだった。いや、『美味しくない』って意味のマズイじゃなくて……


 あ、あれ?


 またヤケドのような熱さと痛みを肺に感じるものとばかり思って身構えたら、そうでもない。


 なんだか排ガスが混じった空気を大量に吸ったみたいな、気持ちの悪さは感じるけれど、さっきと比べれば天国だ。


 よく分からないけど、とりあえず窒息死も免れたみたいで助かった!


「天内君! 皆! 大丈夫か!?」


 門川君の声が聞こえてハッとした。そうだ、門川君は無事なの!?


 慌てて顔を上げて中庭の方を見たら、彼は両手で印を組んで、真剣な表情で術を発動中の状態。


 と、いうことは!


「門川君、術が間に合ったんだね!? ありがとうありがとう本当にありがとうー!」


 崇め奉る勢いでお礼の言葉を連発したけど、門川君は緊張した様子をまったく崩さなかった。


「礼を言うには早い。即席で唱えたせいで、言霊の威力が半減しているんだ。完全には『道』の影響を抑えきれていないんだよ」


 え? そ、そうなの? じゃあ、まだ『道』は中途半端に繋がってる状態なわけ?


「そっか。さっきの詠唱、やたら早口だったもんね……ゲホゴホゲホッ!」


 しゃべってる途中で、気管の奥から強い咳が込み上げてくる。


 たしかに門川君が言う通り、『道』の脅威はまだ去っていないらしい。今もこうして息をするたび、確実に呼吸器官がダメージを追ってる。


 なんとか身を起こそうとしたら、手足が鉛を装着したみたいに重くて重くて、またベシャッと床に倒れてしまった。


「お、重い……。重力も戻っていないってこと?」


「さっきに比べればマシな程度じゃ。無理をするな」


 あたしと同じように床に身を横たえた絹糸が、やっぱり少しつらそうな声でそう言った。
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