神様修行はじめます! 其の五
 地味男の顔に、再び微笑が宿る。


 地獄を背にした者が、それをあえて誇るかのような凄惨な笑みだった。


「理解など不要。共感も無用にございます。私はただ事を成し、その結果が生まれるだけのこと」


「蛟殿」


 術を発動している門川君が、地味男の言葉の流れを切るように問う。


「『過ぎたるは猶、及ばざるが如し』。それはあなた自身が言った言葉だ。あなたの想いは、過ぎてはいないと?」


「その答えは、後の世に生きる神の一族たちが出してくれるでしょう」


 たいして興味もなさそうに、地味男が答えた。


「私が神の一族を救った英雄か、限度を行き過ぎた狂人かは、周りの者たちが決めること。私はそれに対して一片の興味も関心もない」


 話は済んだとばかりに、地味男がゆっくりと立ち上がる。


 背筋を伸ばし、まっすぐ前を見る堂々とした姿は、なにひとつ迷うものの無い者の姿だった。


「私は水晶を殺した世の道理に対して、決して服従などはしない。ゆえに己の望みを果たすために、手を伸ばし続けるのです」


―― ドンッ!


 地味男の足元の水絵巻に、天から光が一直線に降り注いだ。


 まるで突き刺さるような強い月光が水絵巻を包み込み、直視するのも困難なほどの眩い白銀色に光り輝く。


「うわっ!」


 あまりの眩しさに思わず顔を背けたあたしの耳に、赤ん坊の泣き声が聞こえた。


 これは、九尾の……!


 開きかけた『道』の中心部分に横たわる、九尾の黒コゲの体が見える。


 その炭の塊のような体から、赤ん坊の小さな手足が何本もニョキニョキと生え、のたうつように蠢いていた。


 苦しげな泣き声と共に、卵の腐った臭いと濁って澱んだ空気がドッと漏れ出てくる。


『道』の影響が濃くなってる! 古代種の体を触媒にして、完全に『道』を繋げようとしているんだ!
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