神様修行はじめます! 其の五
「ううぅ~、根性、再び~……」
床に腹這いになったまま、あたしはウゴウゴと身じろぎを開始した。
なんとか両手と両足を動かして、ほふく前進しようと試みる。
でもほんの数センチ分、門川君のいる方へ向かって進んだだけで力尽きてしまった。
あぁ、ダメ。やっぱり体が重くてたまらない。前にマロさんの屋敷で、お遊びで十二単を着せてもらったときみたいだ。
滅火の術を限界まで使ってなかったら、もっとまともに動けたはずなのに!
―― ホギャアァ、ホギャアァ!
九尾の赤ん坊の、まさに絶叫と呼ぶにふさわしい泣き声が、頭の中に直接突き刺さる勢いで聞こえてくる。
炭のような体から飛び出た小さな手足がビクビクと痙攣して、断末魔の苦しみを伝えた。
……いよいよだ。いよいよ、異界の『道』が開こうとしている!
広間の空気は色がついたようにどんより濁り、それに比例するように呼吸が苦しくなって、あたしは暴れるように咳き込んだ。
強い酸の臭いと共に黒い影がどんどんこっちに接近してきて、もう、あたしの足元の数十センチまで迫っている。
死にもの狂いで動こうとしたけれど、ただでさえ疲弊しきった体が、酸欠のダブルパンチを食らって動かない。
いやだ。いやだ。いやだ!
爪の先で虚しく床を引っ掻きながら、あたしは声にならない悲鳴を上げた。
『門川君! 門川君!』
パクパクと開く唇から、音は出ない。
それでもあたしは、心の底から湧き上がる思いを叫び続けた。
『これが最後なら、あなたと一緒に……!』
頭の中は真っ白だった。
死と直面する恐怖は、不思議となかった。彼と出会ったことによって、神の一族として生きる決意をしたことも、少しも後悔していない。
自分の命が尽きることの悲嘆も、なにもない。
ただひたすら、門川 永久が愛しい。
この愛が、私の世界のすべてだ。
だから門川君、あなたと……あなたと、一緒に!
「……!」
愛しい人へと一心に伸びた指先が、絶望に震えた。
あたしの頬に、滝のような涙がボタボタと流れ落ちる。
……届かない!
どんなに求めても、まるで月に向かって伸ばす手のように、あたしの願いは届かない!
床に腹這いになったまま、あたしはウゴウゴと身じろぎを開始した。
なんとか両手と両足を動かして、ほふく前進しようと試みる。
でもほんの数センチ分、門川君のいる方へ向かって進んだだけで力尽きてしまった。
あぁ、ダメ。やっぱり体が重くてたまらない。前にマロさんの屋敷で、お遊びで十二単を着せてもらったときみたいだ。
滅火の術を限界まで使ってなかったら、もっとまともに動けたはずなのに!
―― ホギャアァ、ホギャアァ!
九尾の赤ん坊の、まさに絶叫と呼ぶにふさわしい泣き声が、頭の中に直接突き刺さる勢いで聞こえてくる。
炭のような体から飛び出た小さな手足がビクビクと痙攣して、断末魔の苦しみを伝えた。
……いよいよだ。いよいよ、異界の『道』が開こうとしている!
広間の空気は色がついたようにどんより濁り、それに比例するように呼吸が苦しくなって、あたしは暴れるように咳き込んだ。
強い酸の臭いと共に黒い影がどんどんこっちに接近してきて、もう、あたしの足元の数十センチまで迫っている。
死にもの狂いで動こうとしたけれど、ただでさえ疲弊しきった体が、酸欠のダブルパンチを食らって動かない。
いやだ。いやだ。いやだ!
爪の先で虚しく床を引っ掻きながら、あたしは声にならない悲鳴を上げた。
『門川君! 門川君!』
パクパクと開く唇から、音は出ない。
それでもあたしは、心の底から湧き上がる思いを叫び続けた。
『これが最後なら、あなたと一緒に……!』
頭の中は真っ白だった。
死と直面する恐怖は、不思議となかった。彼と出会ったことによって、神の一族として生きる決意をしたことも、少しも後悔していない。
自分の命が尽きることの悲嘆も、なにもない。
ただひたすら、門川 永久が愛しい。
この愛が、私の世界のすべてだ。
だから門川君、あなたと……あなたと、一緒に!
「……!」
愛しい人へと一心に伸びた指先が、絶望に震えた。
あたしの頬に、滝のような涙がボタボタと流れ落ちる。
……届かない!
どんなに求めても、まるで月に向かって伸ばす手のように、あたしの願いは届かない!