神様修行はじめます! 其の五
「成重殿、あなたは……」
地味男と水園さんの会話を聞いた門川君が、小さな声で、誰に言うでもなくポツリとつぶやいた。
地味男の涙を食い入るように見つめる門川君の目に、やるせない感情の色が見える。
その目を見ながら、あたしは、さっき彼に言われた言葉を思い出していた。
『もしも現世が異形に襲われたら、そのときキミはどうする?』
……現世を守るという選択が、正しいのだろうと思う。
でも正しい選択が、すべての人を幸せにするとは限らない。
『キミは正義に生きる人だ。きっと僕らの恋情より、自分の命より、人々を守ることを選ぶ。それが僕には耐えられなかったんだ』
そうだ。残された者は、自分を置き去りにして英雄のように逝った相手を責めることもできず、一生思い知ることになる。
自分は……愛する者から選ばれなかったのだという事実を。
『すべてを捨て、すべてを犠牲にすることも厭わぬほどの強い情念こそ、究極の愛情』
地味男のあの言葉は、果たされなかった地味男の願い。
愛する水晶さんに、すべてを捨てても自分を選んで欲しかったんだ。
門川君は唇を固く結び、まるで自分の思いを投影するように地味男を見つめ続けている。
地味男は水園さんに掴まれている手を軽く引きながら、静かに言った。
「水園殿、この手を放しなさい。異界で生け贄となるべきは私なのです」
「それは違います!」
呆けたように地味男の話を聞いていた水園さんは、我に返って大きく首を横に振った。
「違います! それは違……あっ!」
ズルズルと床を滑っているうちに足元のバランスを崩した水園さんは、前のめりになってドサリと床に倒れてしまった。
それでも、彼女は地味男の手を放そうとしない。
ガレキが散乱した広間を、腹這い状態で地味男と一緒に引きずられていく。
地味男と水園さんの会話を聞いた門川君が、小さな声で、誰に言うでもなくポツリとつぶやいた。
地味男の涙を食い入るように見つめる門川君の目に、やるせない感情の色が見える。
その目を見ながら、あたしは、さっき彼に言われた言葉を思い出していた。
『もしも現世が異形に襲われたら、そのときキミはどうする?』
……現世を守るという選択が、正しいのだろうと思う。
でも正しい選択が、すべての人を幸せにするとは限らない。
『キミは正義に生きる人だ。きっと僕らの恋情より、自分の命より、人々を守ることを選ぶ。それが僕には耐えられなかったんだ』
そうだ。残された者は、自分を置き去りにして英雄のように逝った相手を責めることもできず、一生思い知ることになる。
自分は……愛する者から選ばれなかったのだという事実を。
『すべてを捨て、すべてを犠牲にすることも厭わぬほどの強い情念こそ、究極の愛情』
地味男のあの言葉は、果たされなかった地味男の願い。
愛する水晶さんに、すべてを捨てても自分を選んで欲しかったんだ。
門川君は唇を固く結び、まるで自分の思いを投影するように地味男を見つめ続けている。
地味男は水園さんに掴まれている手を軽く引きながら、静かに言った。
「水園殿、この手を放しなさい。異界で生け贄となるべきは私なのです」
「それは違います!」
呆けたように地味男の話を聞いていた水園さんは、我に返って大きく首を横に振った。
「違います! それは違……あっ!」
ズルズルと床を滑っているうちに足元のバランスを崩した水園さんは、前のめりになってドサリと床に倒れてしまった。
それでも、彼女は地味男の手を放そうとしない。
ガレキが散乱した広間を、腹這い状態で地味男と一緒に引きずられていく。