神様修行はじめます! 其の五
「今度こそ声に出して言わせて下さい! あなたが生け贄になるなんて間違っている! そんなことは間違っているんです!」
水園さんは子どものように激しく泣きじゃくった。
嗚咽の混じった語尾は震えて、なにを言っているのかよく聞き取れない。
それでも顔をグシャグシャにして、涙をボロボロ流して、彼女は叫び続けている。
ずっと言いたくて、でも言えなかった言葉を、全身全霊で叫び続けていた。
「あなたが死んではダメよ! 私が……私が死ぬべきなの!」
「いいえ、それは許しません」
そう答えた地味男の袖口から、一匹の小さなヘビがちょこんと顔を出した。
そして細い糸のようなキバを水園さんの手の甲に突き立てる。
「痛っ!」
不意打ちの痛みを感じた水園さんが、驚いた表情で自分の手を見つめる。
あれほど必死に握りしめていた彼女の両手から、地味男の手がスルリと抜けていった。
「あ……あ……?」
地味男の手を握り直そうとする水園さんの指が、痙攣して動かない。
地面にクタリと横たわった体も、なぜかピクリとも動かなかった。
「その麻痺の毒は一過性です。しばらくすれば動けるようになるので、心配はいりませんよ」
「…………」
どうやら水園さんは声もだせない状態らしく、唇が不自然に震えている。
それでも目で追いすがる彼女に、地味男は異形に引きずられて徐々に遠ざかりながら言った。
「あなたの言う通りだ。誰かが生け贄になる世界なんて間違っている」
そのために、地味男は事を起こした。
水晶さんが『美しい』と言った世界が、本当に美しい物であるように。
誰ひとりとして犠牲にならない世界であるために。
その彼の目の前で水園さんが生け贄になるなんて、絶対に許容できないこと。
「だから水園殿、あなたは生きなさい。私が死ぬから」
水園さんは子どものように激しく泣きじゃくった。
嗚咽の混じった語尾は震えて、なにを言っているのかよく聞き取れない。
それでも顔をグシャグシャにして、涙をボロボロ流して、彼女は叫び続けている。
ずっと言いたくて、でも言えなかった言葉を、全身全霊で叫び続けていた。
「あなたが死んではダメよ! 私が……私が死ぬべきなの!」
「いいえ、それは許しません」
そう答えた地味男の袖口から、一匹の小さなヘビがちょこんと顔を出した。
そして細い糸のようなキバを水園さんの手の甲に突き立てる。
「痛っ!」
不意打ちの痛みを感じた水園さんが、驚いた表情で自分の手を見つめる。
あれほど必死に握りしめていた彼女の両手から、地味男の手がスルリと抜けていった。
「あ……あ……?」
地味男の手を握り直そうとする水園さんの指が、痙攣して動かない。
地面にクタリと横たわった体も、なぜかピクリとも動かなかった。
「その麻痺の毒は一過性です。しばらくすれば動けるようになるので、心配はいりませんよ」
「…………」
どうやら水園さんは声もだせない状態らしく、唇が不自然に震えている。
それでも目で追いすがる彼女に、地味男は異形に引きずられて徐々に遠ざかりながら言った。
「あなたの言う通りだ。誰かが生け贄になる世界なんて間違っている」
そのために、地味男は事を起こした。
水晶さんが『美しい』と言った世界が、本当に美しい物であるように。
誰ひとりとして犠牲にならない世界であるために。
その彼の目の前で水園さんが生け贄になるなんて、絶対に許容できないこと。
「だから水園殿、あなたは生きなさい。私が死ぬから」