神様修行はじめます! 其の五
「……!?」
それが何なのか、見定める間もなかった。
とつぜん『底なし穴』と地味男の体が真っ白な大量の煙に包まれて、なにも見えなくなってしまう。
この場の全員、なにが起こっているのかまったく分からず、完全に虚を突かれていた。
―― コツン!
白い煙の中から何かが飛び出し、床の上に落下する硬質な音が響く。
何度かバウンドした『それ』が転がっていく様子を、皆が唖然と目で追っていた。
あたしはポカンと口を開けながら、『それ』が飛んで来た方向へ、ノロノロ首を動かす。
そこには……
「クレーター、さん?」
さっき壁に激突した衝撃で負傷したのか、こめかみから血を流したクレーターさんが、顔をしかめながら立っている。
まるで、野球の投球フォームみたいな姿勢で。
……そうだ。彼がとっさにアレを投げたに違いないんだ。
アレを。
あの宝物を。
つまり……。
『家宝・打ち出の小槌』を。
―― スー……
幕が開くかのように、一気に白い煙が流れていく。
鮮明になった視界には、当然の結果が待ち構えていた。
そう。まるで見上げる巨木のように、威圧的にそびえ立っていた『底なし穴』が……
見事に小学生サイズまで縮まっちゃっている光景が!!
「よくやった! 小浮気殿!」
叫んだ門川君が素早く立ち上がり、駆け出した。
彼に抱き止められていたあたしは支えを失い、顔面からベシャッと床に倒れてしまう。
イテテ! は、鼻が潰れる! いや、そんなことはどうでもいい!
顔の真ん中を手で押さえながらガバッと起き上がったあたしの目に、メガネを外しながら駆ける門川君の姿が見えた。
メガネは彼の手の中で、彼の望むがまま美しい氷刀へと姿を変える。
母の形見である稀代の名刀を頭上に振り上げ、彼は気合いもろとも『底なし穴』に斬りつけた。
異界の体に、真っ直ぐな一本の線が走る。
見事なその斬り口から、ピシピシと音をたてて真白な霜が生まれて、瞬く間に『底なし穴』の全身を覆い尽くした。
そして門川君の、返す刀の一刀両断!
極限の冷気によって凍結させられた『底なし穴』は、凍った花が握りつぶされるように一瞬で砕け散った。
それと同時に、異界の穴が完全に閉じて消滅する。
なんの痕跡もなくなった床の上に、地味男の体がドサリと横たわった。
宙を舞う氷のカケラが霧散して光を弾き、門川君の精悍な横顔を飾る。
ほんの数秒の間に起きたこの出来事を、あたしは興奮で震えながら、限界まで見開いた両目で見ていた。
か……
か…………
「門川君――! 愛してるよ――!」
それが何なのか、見定める間もなかった。
とつぜん『底なし穴』と地味男の体が真っ白な大量の煙に包まれて、なにも見えなくなってしまう。
この場の全員、なにが起こっているのかまったく分からず、完全に虚を突かれていた。
―― コツン!
白い煙の中から何かが飛び出し、床の上に落下する硬質な音が響く。
何度かバウンドした『それ』が転がっていく様子を、皆が唖然と目で追っていた。
あたしはポカンと口を開けながら、『それ』が飛んで来た方向へ、ノロノロ首を動かす。
そこには……
「クレーター、さん?」
さっき壁に激突した衝撃で負傷したのか、こめかみから血を流したクレーターさんが、顔をしかめながら立っている。
まるで、野球の投球フォームみたいな姿勢で。
……そうだ。彼がとっさにアレを投げたに違いないんだ。
アレを。
あの宝物を。
つまり……。
『家宝・打ち出の小槌』を。
―― スー……
幕が開くかのように、一気に白い煙が流れていく。
鮮明になった視界には、当然の結果が待ち構えていた。
そう。まるで見上げる巨木のように、威圧的にそびえ立っていた『底なし穴』が……
見事に小学生サイズまで縮まっちゃっている光景が!!
「よくやった! 小浮気殿!」
叫んだ門川君が素早く立ち上がり、駆け出した。
彼に抱き止められていたあたしは支えを失い、顔面からベシャッと床に倒れてしまう。
イテテ! は、鼻が潰れる! いや、そんなことはどうでもいい!
顔の真ん中を手で押さえながらガバッと起き上がったあたしの目に、メガネを外しながら駆ける門川君の姿が見えた。
メガネは彼の手の中で、彼の望むがまま美しい氷刀へと姿を変える。
母の形見である稀代の名刀を頭上に振り上げ、彼は気合いもろとも『底なし穴』に斬りつけた。
異界の体に、真っ直ぐな一本の線が走る。
見事なその斬り口から、ピシピシと音をたてて真白な霜が生まれて、瞬く間に『底なし穴』の全身を覆い尽くした。
そして門川君の、返す刀の一刀両断!
極限の冷気によって凍結させられた『底なし穴』は、凍った花が握りつぶされるように一瞬で砕け散った。
それと同時に、異界の穴が完全に閉じて消滅する。
なんの痕跡もなくなった床の上に、地味男の体がドサリと横たわった。
宙を舞う氷のカケラが霧散して光を弾き、門川君の精悍な横顔を飾る。
ほんの数秒の間に起きたこの出来事を、あたしは興奮で震えながら、限界まで見開いた両目で見ていた。
か……
か…………
「門川君――! 愛してるよ――!」