神様修行はじめます! 其の五
 ブラボー! さすがはあたしの未来の旦那様!


 門川君のお母さん! 彼に素晴らしい刀を遺してくれてありがとうございます!


 立ち上がって彼の元へ駆けつけたかったけれど、まだ回復してない体が言うことをきいてくれない。


 あたしはハイハイを覚えたての赤ちゃんみたいに両手両足をジタバタさせながら、夢中で彼の所まで這いずった。


「天内君、顔面が床に激突したようだが大丈夫か?」


 あたしの赤くなった鼻を見た門川君が、メガネをかけながら真面目な顔で聞いてくる。


「大丈夫! もともと凹凸の乏しい顔だから被害は最小限!」


「申し訳なかった。とっさのことで、ついキミのことを思いきり放り出してしまった」


 うん! けっこう手加減なしで放り投げてくれたよね!


 普段だったら容赦しないとこだけど、今回に限っては許すよ!


 次にやったら許さないけどね!


「成重様! 成重様あぁ!」


 まだ体に麻痺が多少残っているらしい水園さんが、ほふく前進状態でズリズリと近寄ってきた。


 そして、床の上に仰向けになっている地味男の着物の袖をギュッとつかみながら、安心したように大声で泣き出す。


 他の仲間たちもゾロゾロと地味男の元へ集まってきた。


 絹糸が鼻をヒクつかせながら周囲の様子を窺う。


「もうこれで完全に、異界の脅威は去ったようじゃのぅ」


「で……では今度こそ、今度こそ本当に、麻呂は結界を解除してもよいのでおじゃりますか!?」


「え!? マロさんったらまだ結界張ってたの!? よく維持できてたね!?」


「お前もたいした男じゃのぅ。もうよいわ。術を解いて楽にせい」


 絹糸の言葉に、門川君もうなづいた。


 マロさんはふたりに何度も確認してからようやく術を解いて、その場にヘナヘナと崩れ落ちてしまう。


 本当にすごいよマロさん! マロさんがいなかったら現世はどうなっていたことか!


 赤ちゃんが生まれたら、お祝い奮発するから期待しててね!
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