失恋相手が恋人です
「今日はさすがに来ていないよね……」

抱えてきた荷物を机の上に置いて、ポツリと呟く。

「さっき会ったばかりだもんね……」

火照りがやっとひいた顔が再び熱をもつ。

まさか。

あんなに近くに桧山くんがいたなんて。

初めて……声を聞くことができたなんて。

いつも私は、ここから彼を見つめることしかできなかったのに。

そう。

この教室は。

私が初めて彼に出会った場所であり、彼を今も見つめている場所。

何だか一方的に思いを募らせて追いかけている様に聞こえるかもしれないけれど。

そうではなく。

これはきっと恋ではなくて。

ただの憧れ。

あんなに全てが整った完璧な人に。

あんな風にひたむきに、綺麗な優しい瞳で見つめられたいと願う、ただの憧れ。
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