失恋相手が恋人です
初めて彼に出会った日。
新入生の物品、教科書販売が本館の四階で行われた日だった。
四月初旬の気持ちよく晴れた日で。
午前中の早い時間にもかかわらず、館内は混雑していた。
予想はしていたけれど、荷物は両手いっぱい、さらには重たい。
買い忘れがないか不安を感じた私は、とりあえず荷物を広げて整理したいと思ってキョロキョロしていた。
階下に続く階段は四階に向かってくる学生と、出口に向かう学生で溢れていて。
反対に、上に続く階段はがらんとしていた。
私は迷わず上に続く階段を上り、目の前にあった教室に入った。
扉は開け放たれていて、太陽の光が充分に差し込んだ室内には誰もいないようだった。
誰もいない、と思った。
荷物を手近な机に置いて、事前に渡されていたプリントと照らし合わせて。
買い忘れがないことにホッとした時。
不意に春の風が室内に吹いた。
無造作に置いたプリントが舞い上がる。
「わっ……」
慌ててプリントを手で押さえて。
風が吹いてきた窓を見る。
その時。
一人の学生が窓の方を見て座っていることに気付いた。
薄茶色の長めの髪。
切れ長の瞳。
伏せた長い睫毛。
頬杖をついた長い指。
まるで一つの景色みたいに。
彼はそこにいた。
いつからいたのかはわからなくて。
だけど。
何の違和感もなく、彼はそこに存在していた。
新入生の物品、教科書販売が本館の四階で行われた日だった。
四月初旬の気持ちよく晴れた日で。
午前中の早い時間にもかかわらず、館内は混雑していた。
予想はしていたけれど、荷物は両手いっぱい、さらには重たい。
買い忘れがないか不安を感じた私は、とりあえず荷物を広げて整理したいと思ってキョロキョロしていた。
階下に続く階段は四階に向かってくる学生と、出口に向かう学生で溢れていて。
反対に、上に続く階段はがらんとしていた。
私は迷わず上に続く階段を上り、目の前にあった教室に入った。
扉は開け放たれていて、太陽の光が充分に差し込んだ室内には誰もいないようだった。
誰もいない、と思った。
荷物を手近な机に置いて、事前に渡されていたプリントと照らし合わせて。
買い忘れがないことにホッとした時。
不意に春の風が室内に吹いた。
無造作に置いたプリントが舞い上がる。
「わっ……」
慌ててプリントを手で押さえて。
風が吹いてきた窓を見る。
その時。
一人の学生が窓の方を見て座っていることに気付いた。
薄茶色の長めの髪。
切れ長の瞳。
伏せた長い睫毛。
頬杖をついた長い指。
まるで一つの景色みたいに。
彼はそこにいた。
いつからいたのかはわからなくて。
だけど。
何の違和感もなく、彼はそこに存在していた。