失恋相手が恋人です
「正直、最初からきちんと嘘をつかずにいたら良かったのに、って思うけど……それは今更だし。
本当に形だけの見せかけの付合いだったものが、ちょっと変わってきて、距離が近くなった、そう思えばいいじゃない」

ね?と萌恵がフローリングの床にぺたりと座り込んだ私を見下ろす。

「……これから、でしょ?
これからいっぱい話してお互いのことをわかりあっていったらいいじゃない?
それから、本当のことを言ってもきっとわかってくれるよ。
ありのままを打ち明けた方がいいと言えばそうだろうけど、今、お互いにあんまりよくわかりあってない状態だったら誤解されちゃうかもしれないじゃない?
沙穂が騙すつもりも嘘をつくつもりもなかったんだって、ちゃんと信じてもらえるようになるまで待つべきじゃない?」

「……萌恵」

「それに、桧山くんは沙穂を大事に思ってると思うけどなぁ……」

「……何で?」

いきなりの萌恵の指摘にカアッと恥ずかしくなる私。

「だって、昨日は映画に二人で行ったんでしょ?」

コクンと頷く私。

「それってデートでしょ、普通に考えて。
大体、何とも思ってなかったり、どうでもいい女子と映画なんて密室に二人で行く?
あんなに片っ端から告白されても断っている桧山くんが。
それにほら、同じ学部の美帆なんて、この間どうしても見たい映画があったから一人で観に行ったって言ってたよ?」

「いや、それは美帆がよっぽど映画観たかったからなんじゃ……」

一応否定する。

「違うわよ、そういうことを言いたいんじゃないの。
一人でも望めばどんな女子とも行けるのにわざわざ沙穂と行ったんだよってこと!
どうせ、手、繋いでたんでしょ?」

ニヤニヤと萌恵が私を見る。

途端に耳まで茹でダコ状態になる私。

「やっぱりね」

ふふん、と鼻をならしながら、萌恵が続ける。

「ね?
二人でいても嫌じゃないってこと。
むしろ一緒にいたいってことよ。
大体そうじゃなかったら、この間のグループワークの時みたいに、わざわざ問い質すために迎えに来ないでしょ」

「……そうなのかな」

「あのねぇ、沙穂?
自分でも少しは大事にされてるなって思うでしょ?
初恋がまだなわけでも、誰かと付き合ったことがないわけでもないんだし」

呆れた表情の萌恵。

「あれから毎日電話やメールくれるのだって気にしてくれてるから、話したいから、でしょ?
沙穂はそうじゃないの?」

たたみかけるような萌恵の指摘に私は俯く。

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