失恋相手が恋人です
そう。

私に言われた言葉みたいな気がした。

映画が終わって。

画面に映し出されるエンドロール。

それを見つめながら、誰に言うでもなく言った葵くん。

その言葉に私は一瞬動けなくなった。

『最初から、何かが違っていたら』

『ちょっとした歯車の違いで』

勿論、ただの感想だったのかもしれない。

だけど、それにしてはタイミングが良すぎて。

もしかしたら葵くんは、私の失恋相手が自分だということに気付いているのかもしれないと、その時思った。

「……考えすぎでしょ」

複雑な表情で萌恵が否定する。

「……そんなに気になるならきちんと沙穂の口から話してみたら?
変にバレるよりは、その方がいいんじゃない?
それに桧山くん、やっぱり沙穂のこと好きなんじゃないかなあ?」

「それは……ないよ、多分。
葵くんは優しいし、一旦引き受けたからだよ、責任も感じて、私と向き合って付き合おうとしてくれてるんだよ」

「でも責任感や同情だけで、付き合える?
友達以上恋人未満ってこと?
そんな面倒なこと、わざわざする?桧山くんだよ?
沙穂には悪いけれど、何回も言うけれど、あんなにもてる人だよ?」

矢継ぎ早の萌恵の指摘に返す言葉がない私。

「……歩美先輩みたいに華やかで綺麗だったらなぁ……」

ポロリと零れた自嘲気味な言葉。

それは小さな願望と憧れ。

もし、私が歩美先輩だったら。

そんなことはあり得ないし、起こり得ない。

だけど。

もし私が歩美先輩だったなら、葵くんに自信をもって気持ちを打ち明けられた……。

「やだ、沙穂は綺麗だよ?
沙穂は嫌がっているけれど、背が高くて華奢な体型も、二重の猫目も可愛いじゃない!」

自分が悲しくなりそうな、あり得ない想像を全力でフォローしてくれる親友が打ち破ってくれた。

私はそのことが何だか可笑しくて苦笑してしまった。


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