きらきら

【都内 人気のイルミネーションスポット】で検索して私は歩き続けた。表参道・恵比寿・六本木……人と光の渦の中で私はひたすら四角い画面に光を詰め込んだ。ゴールドの光を浴びた吹き抜けのカフェで☆るいーず☆は甘い声を出し彼の腕に自分の腕を絡める。淡い雪のようなハーフコートにコーラルピンクの手袋。唇はポインセチアに負けないくらい赤く白い肌に映えている。彼女はプリンセス。誰も逆らえず誰からも慕われ愛される。私は華やかなゴールドのツリーを撮影しすぐ彼女のツィッターに載せた。

【早くクリスマスが来ないかな。イブは彼と次の日は家族と過ごそう。プレゼントが楽しみ】

載せてから私はクスリと笑ってしまう。☆るいーず☆はプレゼントをもらう事しか考えてない。あげる事も考えなきゃいけないのにね。でも彼女はそういう女の子でそれが許される女の子。沢山の人混みの中で私は自分を見失いそうになる。いやもう見失っている。私は誰なんだろう、そして何をしているのだろう。午後からの頭痛が止まないからバスに乗る前に頭痛薬を飲もう。きっと薬の作用で寝れるはず。人とぶつかりながらバスターミナルに向かう途中、手が冷たくなりポケットに手を入れると小さな物が入ってた。指でつまんで出してみると女子高生にもらったキシリトールガムの粒だった。私は口に放り込み小さなそれを味わう。吸い込む空気がクリアになった気がした。3000円のケーキよりゆっくり名残惜しそうに味わって、なぜか涙を流していた。

誰も知ってる人がいないから

声も出さずに

歩きながら

バスターミナルまで私は迷子のように泣いていた。

幸せな☆るいーず☆

私にあなたの幸せを少しだけ下さい。

泣いた分だけ

グレーのハートが増える気がする。
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