きらきら

帰りの夜行バスで青いニット帽の女子高生を探したが彼女の姿はなかった。帰りの便は空席が目立ち、両隣は空いていたので気持ちが楽になる。充実した都会の時間を過ごしたのだろう、斜め前で若い女の子が二人互いのスマホを覗いて笑い声を上げていた。彼女らの座席の前のフックには小さな紙袋。それは流行のスイーツ店の紙袋。職場で話題になった店で『一度食べたいね』って言ってたナッツが沢山入ったバナナケーキが有名だ。夕方に一生懸命に光を追いかけたクリスマスツリーの前に店があったかもしれない。こんな手の届く距離にいたのに、私は☆るいーず☆に振り回されて井上さんにお土産も渡せない。にんじん色のみかんのお礼もできず、ただ私自身が腐りそう。☆るいーず☆が輝けば輝くほど私は腐って白いカビをまとい存在を無くす。

隣の席のブランケットも借りて、私は行く時と同じ格好で丸くなって☆るいーず☆をチェックする。イルミネーションの画像は評判もよくコメントもいいねも多い。やっぱり画像だ。歩き回ってパンパンになった足が気持ちだけ軽くなる。明日は何てつぶやこう。キラキラ輝く☆るいーず☆はどんな日曜日を過ごしているのだろう。


< 7 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop