きらきら


天井の蛍光灯がチカチカすると思ったら、次の日には切れてしまった。

「とうとう切れたか」
課長は独り言を言いながら受話器を握って隣の電気屋に電話した。
「商工会ですーお世話になってますー。いやうちの事務所の蛍光灯がとうとうダメになりまして、代わりを持って来てくれる?うん。できれば取り替えてくれたらありがたいねーおじさんばっかりだからさ」
その会話の内容に少し胃が重くなった。取り換えなら堀田君が来てしまう。私は乱暴に机の上を片付けてパソコンを閉じる。

「井上さん。私、銀行に記帳に行って来ますけど、他に回るとこないですか?」
心臓がトクトク小さく響く。堀田君が来るより先に出たい。

「記帳なら午後から長谷川さんが行くからいいわよ」
のんびりとした返事に心の奥が急ぎ出す。

「大丈夫ですよ。早めに入金処理したいので」

「そうね」肯定的な一言が出て井上さんに許可をもらえそうでホッとしていたら「あ、いいよいいよ。僕が今行ってあげる」と、長谷川さんが横から声を出す。

「寒いからいいですよ。私が走ります」

「いやいいよ。寒いからみっちゃんは事務所に居なさい。外回りもあるから僕が行くから問題ない」
長谷川さんの癒し系な声が今日は憎らしい。

「よかったねー」って井上さんが言った時、外の自動ドアが開いて「まいどー」と、元気な声が事務所に響く。

「早いね」って課長に言われて堀田君は自信満々な笑顔を見せた。

「ピザ屋より早いでしょー」「うーん。ピザ屋さんないからわかんない」「俺、町の空き店舗でピザ屋やろうかなー電気屋より儲かりそう」「ピザ屋よりドーナッツにして。ケンタッキーでもいいよー」「そんな店あったら井上さんがまた巨大化しそうだな」「嫌な子ねー早く取り替えなさい」

堀田君の明るさは、いつも私を怯えさせる。
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