悪役の私
気がつくと私は少し眠っていたみたいだ。
なんだかすごく心地の良い夢を見ていた気がする…。
…ん??
左手がなにか温かいものに包まれているような感覚が…。
え…?
繋がれた私の手があって、その先には優がいて…
…っ!!
私は目を見開いて優を見た。
優は目を閉じたままで、まだ寝ているのだろうか。
急に心臓が大きく波を打った。
え、と、とりあえず早く離さなきゃ、気付かれる前に…。
困惑しながらも手を離そうとした瞬間、ギュっと強い力で握り返され、鼓動がどんどん早くなる。
それと同時に、私の手にも力が入らなくなった。
なんでだろう。
ドキドキするのに、心地良い。
離さなきゃいけないのに、離そうと思えない。
この温かい手は、きっとたくさんの優の優しさで包まれているんだ。
優がまだ眠っていることを確認した私は、ゆっくりと目を閉じる。
今だけ。
この温もりに包まれていたい。
なにも気が付かなかったフリをしよう。
きっと次、目を覚ました時にはもう離れているだろうから。
今だけ…。