浅葱色の妖
「俺ぁ今託児所じゃねぇって言ったんだよ聞こえなかったのか?」
「まあまあトシ。話くらい聞いてあげようじゃないか」
豪快そうな男が言った。
「聞く意味なんざねえ。人手は足りてんだ」
さっきと打って変わって土方さんの口調はきつい。
「でも、こんな所で働きたいだなんて何か理由があるんだろう?」
土方さんから目を離して、彼は私を見た。
理由はただひとつ。
母を殺した奴を見つけて仇を討つこと。
だけどそんなことを言うわけにもいかない。
「い、行く所がないんです」
咄嗟に出たのはそんな言葉だった。
「どういうこった」
きつい口調の土方さんが私を睨む。
「火事で家族も家も何もかも失ったんです。もう行く所がないんです」
我ながらなかなかの言い訳だと思う。