永遠なんてないこの世界で、きみと奇跡みたいな恋を。
また、ベッドに一人になる私は、窓から見える青空を見上げた。
空にも……朝、昼、夕で見せる顔が違うように、
街も、人にも、私のまだ知らない世界がきっとある。
私は……この世界の美しさを知らずに死ぬことが、ただただ、怖かったんだ。
「どこか遠くに……行ってみたいな……」
私の知らない誰か、モノがある場所へ。
そうしたら私は……この世に未練なんて残さずに、手術だってなんだって、踏み出せるのにな……。
私は、病室にある床頭台の引き出しから、1冊の雑誌を取り出す。
その雑誌には、『行ってみたい関東観光スポット特集』と書かれている。
「沖ノ島の…海……」
決まって開くページは、沖ノ島の海を紹介しているページ。
何度も開いたから、しおりがなくても簡単にこのページが開くんだよね……。
「行けるわけ、無いのにね……」
私は、海へ行くったことがない。
生まれた場所も都会だったし、心臓が悪かった私は、両親から外へ出ることを許してもらえなかった。
さすがに……学校へは行かせてもらえたけど、放課後に友達と遊びに行ったり、旅行へ行ったり……。
そんな普通の生活を、私は知らない。
「窮屈、だなぁ………」
私の意志とは関係無しに、手術も決まっちゃって……。
私の命のはずなのに、私のものでは無いみたい。
そんなことを考えていると、また気持ちがどんよりと、落ち込んだ。