夢幻の騎士と片翼の王女




「おかえり、亜里沙。
俺もつい今しがた帰って来たところだ。
ゼリア様のお屋敷は……お、おいっ!亜里沙、どうした!?」



振り返ったジェームスさんは、私が泣き顔だったことでひどく驚いた様子だった。



「ジェームスさん…私……大変なことを……」

「どうした?一体、なにがあったんだ!?」



話そうと思うのに、胸が詰まってなかなか話せない。
ジェームスさんは私の背中を優しくさすり、私が話し出すのを待ってくれた。







「……本当に申し訳ありません。」

「そうか…そんなことがあったのか。
それは大変だったな。
だけど、金のことなら気にすることない。
俺がなんとかするから。」

「いえ…私が…私がやらかしたことですから。」

「まだ不慣れなおまえをひとりで配達に行かせたのは俺だ。
おまえのやらかしたことは、店主である俺の責任だ。」



そう言ってもらえることはありがたかったけど、そこまでジェームスさんに甘えられるはずはない。
私がやったことだもの。
いっぺんには払えないけど、少しずつ返済していこう。
私はそう考えていた。


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