夢幻の騎士と片翼の王女
「何を勘違いされているのです。
そりゃあ、昔ならばそういうこともあったかもしれませんが…ご主人様はたいそう慈悲深い方です。
あなたの命を奪うことなど考えてはいらっしゃいません。」

「ほ、本当ですか?」

執事さんは、真面目な顔で頷いた。
それを見たら、なんだかほっとして…
余計に涙が止まらなくなった。



「良かったな、亜里沙…」

ジェームスさんも目に涙を浮かべてた。



「それで…ですな。」

執事さんがひときわ大きな声を上げたから、私とジェームスさんは同時に執事さんの方に目を遣った。



「ピエール様が、この度の件の解決に向けて、あなたとお話がしたいとおっしゃっております。」

「それなら俺が…」

「いえ、ご主人様はこの方と二人っきりで話したいとおっしゃっております。」

「しかし……」

「ジェームスさん、私、行って来ます。
私がしでかしたことですから……」



命さえ無事なら、あとはきっとどんなことだって乗り越えられるはず。
そもそも、私が犯した罪なんだもん。
私が償うのは当たり前のことだ。



「それじゃあ、行って来ます。」

涙を拭った私は、表で待っていた馬車に乗り込み、ゼリア様のお屋敷に向かった。


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