【完】もっとちょうだい。
じゃぶっと、海から上がった。


重力によろけた芙祐を支えると
「さすがヤヨちゃん」だって。



「お腹すいたね、なんか食べよ」


そういう芙祐と一緒に海の家のメニューを見上げていると


「……あれ?芙祐だよな!?」



真っ黒に日焼けした
黒髪をツンツンに立てて、黄色いサンバイザーをかぶった
いかにもチャラそうな男が、
芙祐に声をかけてきた。



「え、えぇー!?のり君!!ん?のり……?」


「いや、のりじゃない、ふみ。どっちでもいいんだけどね!」


「あ、そうだそうだ。ごめん、ふみくん」


あらためて、
きゃー久しぶりーって、
ふたりともかるーいノリで
両手をぱちぱちと合わせて喜んでるけど。


「……誰?」


こそっと芙祐に聞く。


まさか元カレ?



「小学校中学校と一緒だった、のりふみくん。すっごいタイムリー。さっき話してた同級生がこの、ふみくん」


「あぁ、看護師に向いてるって言ってたっていう、あの?」


「え?俺の話してたん?なにそれ!?てか芙祐、このひと彼氏?」


指さすな。
さすが、芙祐の友達、
なんか似てる。軽さが。


「へへ、彼氏だよ。弥生くんです」


よろしくね、って、
俺の手、操り人形みたいに動かすな。


「よろしくー!」


操られるがまま、握手された。


「芙祐今なにしてんの?学生?」


「うん、なんと看護学生」


「まじ!やっば!ほら、俺ってやっぱ先見の明あるね」


「あるある」


ふみ君が、持っていたうちわで芙祐と俺を扇ぐ。


「ふみ君は今なにしてんの?」


「俺も学生。今は、うちの旅館のバイトしつつ、海の家のバイトしつつ」


「働いてるの?今?」


「うん、そう。何にしますか?」


突然オーダー取りはじめるなよ。
ままごとじゃねぇんだから。


「ヤヨどうする?」


「なんでもいいよ」


「ヤヨは何でもいいって」


ってふみ君に言うなよ。


「何でもいいか。了解」


え、何を了解されたんだよ。


ちょっと待っててねって、奥に入っていく。


「……芙祐そっくりのやつだな」


「え?あたしあんなにいかつくないよ」


不服そうだけど、自由さがそっくりだよ。



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