【完】もっとちょうだい。
いや、芙祐、何考えてんの。
一緒に入るの嫌がってたのに。
俺はいいけど、そっちはいいの?


あ、やばい。
いろいろ想像したら、結構やばい。

とりあえず礼儀のためにタオルは巻いておいた。


しばらくするとシャワーの音が止まって、
ぺちぺちと地面を歩く足音が近づいてきた。


「ぴかぴか」


そのアホみたいな声に顔を上げる。

すっぴんの芙祐。

「に、なったよ……」


あぁ続きがあったんだ。

ドキドキしすぎて、わりと、心臓こたえてる。
ついでに、のぼせそう。


「はいれば」


「……うん」


なんでそんな端にいんの。
意味ないだろ、それじゃあ。


「こっち。景色よく見えるから」


そんなダサい誘い方しかできないことを悔やむ。

きっと桜木慶太ならさっと手を引いて
もうきっと抱きしめながら入っちゃうんだろうな。きも。


芙祐と俺の距離、一人分の空きがある。


だけど、それでもいっかって
そうおもうほどお互い真っ赤だ。


温泉からゆらゆらと立ちのぼる湯気。


ポタン……芙祐がひとつにまとめた髪の先から水滴が零れる。


「海、きれいだね」


見惚れるみたいに、まつげを伏せて。


はぁ……っと息を吐く。その真っ赤な横顔。


俺の心臓、止めに来てる?



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