もう一度だけでも逢えるなら
 あなたが死んだら悲しむ人がいるだろ! 自分の命は自分のものだけじゃないんだぞ! 

 うるさーい! うるさーい! 私が死んでも悲しむ人なんていない! 喜ぶ人はいる!



 何を言っても無駄だと水樹は思い、鉄塔を登り始め、みくさんを追い越した。

 地上から、三十メートルくらいところまでよじ登った。ほとんど天辺。



 俺が飛び降りるから! その目で見てろ! 水樹は鉄塔から両手を離し、飛び降りる体勢に入った。

 見ず知らずの私のために! どうしてそこまでするのよ! あんた馬鹿じゃないの! みくさんは泣きながらわめく。

 これが俺の役目だ! 水樹はそう叫び、間髪入れずに鉄塔の天辺から飛び降りた。

 ベルリン天使の詩、天使ダミエルのように。



 きゃあああああああああああ! 飛び降りている途中で、みくさんの悲鳴が聞こえたという。



 水樹は頭から地面に激突した。水樹が死なないのは、おわかりのとおり。

 うつ伏せのまま、地面に横たわり、あえて死んだふり。

 ちなみに、鎧は降ってこなかった。

 頭から血を流す演出ができなかったのが残念だったという。

 みくさんは、水樹が死んだと思い込んでいる。
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