もう一度だけでも逢えるなら
 私と水樹さんは、テーブルを挟んで向かい合って座った。

 緊張しているのだろうか、水樹さんは正座している。背筋がピンと伸びている。

 ブーツを履いたまま正座して、お尻が痛くないのだろうか。私は不思議に思う。

「いっぱい食べて、いっぱい飲んでくださいね」

「先ほども言いましたが、お腹は減っていませんし、喉も渇いていません」

「そんなこと言わずに、好きなように飲み食いしてください」

 本当にお腹が減っていないのか、水樹さんは何も口にしない。正座したまま、私の部屋を見回している。

 一人だけ飲み食いするのは悪いので、私も何も食べないで、何も飲まないことにした。

「質問してもいいですか?」

「いいですよ」

「水樹さんも、お仕事帰りなんですか?」

「いえ、仕事帰りというわけではありません」

「そうなんですか」

「はい」

「今日の帰り、電車の中で水樹さんを見かけたんですが、優先席に座っていた若者に何を言っていたんですか?」

「お年寄りに席を譲るように、お願いしたんです」

「それは素敵な行いですね」

 水樹さんは、私が思っていたとおりの人。

 優しい心を持っているに違いない。
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