もう一度だけでも逢えるなら
 水樹さんと話し合い、原っぱまで歩いて行くことになった。待ち合わせ時間は、朝の九時。待ち合わせ場所は、しずく第二公園。

「それでは、そろそろ帰ります」

「もう帰るんですか? このまま泊まってもいいんですよ」

「あなたは、大胆なことを言う人ですね」

 私のことを、まだあなたと呼んでいる。紗優と呼んでくれればいいのに。

「私の名前を覚えていますか?」

「覚えていますよ。紗優さんですよね」

「はい。私の名前は、紗優で――――す」
 若い子みたいな言い方をして、ちょっと恥ずかしい。

「それでは、帰ります」
 水樹さんは勢いよく立ち上がり、玄関に向かっていった。

 とても残念だけど、無理に引き留めるわけにはいかない。

「ドアを開けてもらえませんか?」

「あ、すみません。すぐに開けます」
 私なりの最高の笑顔で玄関のドアを全開に開けた。

 水樹さんはジーンズのポケットに手を入れて、アパートの階段を下りていった。

 しずく第二公園の方に向かって歩いている。

 その後ろ姿に哀愁は感じられない。

 水樹さんの家はどこなのか。どうやって家まで帰るのか。

 すごく気になるけど、また後をつけたりでもしたら、嫌われてしまうかもしれない。

 だから、やめておく。

「まなちゃん、ちょっとお出かけしてくるね」

「にゃあ」

 コンビニやスーパーで売っているタコ焼きより、手作りのタコ焼きのほうがいいに決まっている。レバニラ炒めも自分で作る。

 水樹さんに、私の手料理を食べてもらいたい。

 タコ焼き器とクーラーボックスを買うために、二十四時間営業のディスカウントストアに向かって突進。
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