もう一度だけでも逢えるなら
 私の周りには……誰もいない。

 拾ったところは……見られていないと思う。

 この一万円札を財布に仕舞ったら、私は泥棒になってしまうのか?

 そうこう考えているうちに、時間は過ぎていく。

 そろそろ歩き始めないと、遅刻間違いなし。

 何をしてるんだ! 早く財布に入れるんだ! 天からの贈り物だぞ!

 また悪の自分の声がヒソヒソと。

 ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ……秘密の花園のようにヒソヒソと。

 私の気持ちは、ネコババするほうに傾く。

 この一万円札を落とした人、ごめんなさい。

 私の周囲に人がいないのを確認して、一万円札をお財布に仕舞った。

 ラッキー♪ 今日の私はついてるぜ♪
 
 気分良く駅に向かって歩き始めた。

 ついさっき拾った一万円の使い道を考えながら。



 七時五十七分の電車には間に合いそうもない。

 それでも私は急がない。

 次の電車に間に合えば、ギリギリセーフで朝の朝礼に間に合う。
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