溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

私が勤めているホテル“ル・シェルブル”の副社長、芹川京介(せりかわ きょうすけ)だったのだ。

口を半開きにし、目は見開いたまま。
一瞬で頭の中が真っ白になる。
思考回路が遮断されたような感覚だった。


「どうかしましたか?」


副社長は長身の腰を折り曲げて、深い色味をした瞳で私の顔を覗き込んだ。
なにも答えない私を不審に思ったか、探るように切れ長の目を細める。

私は、思わず一歩うしろへ足が出た。


「あ、いえ……」


咄嗟に目を逸らして首を横に振る。
この場をどう切り抜けたらいいのか考えも及ばなかった。

企画部に所属している私は、経営陣と接する機会も多い。
当然、副社長も私のことは知っている。
私のような人間がこんな場に潜り込んでいると知ったら、どう思うだろうか。
なんて女だと蔑むかもしれない。
身のほど知らずだと、品性を疑われる可能性だってある。

嫌な緊張に包まれる中、そっと副社長の顔を窺う。
すると、その目に私に対する疑惑のような色は見えなかった。
私が上川美緒奈だとは気づいていないのかもしれない。

でも、それも当然かと思い直す。

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