溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

◇◇◇

『お母さんたち、もう諦めるわ』


実家から電話が入ったのは、今からシャワーを浴びようと洋服を脱ぎ始めたときのことだった。


「諦めるって、民宿のこと?」


一度脱いだTシャツに再び袖を通す。


『うん。周りはみんな立ち退きに賛成しているのに、うちだけ残っていてもどうにもならないでしょう?』

「……それはそうだけど」


確かに、一軒だけでどうにか阻止できるものでもない。
立ち退きを要請されている全戸が、一丸となって反対しているならまだしも。


「民宿はどうするの?」

『畳むしかないわね』


電話の向こうでお母さんの声が沈む。


『でも、結構高額な立ち退き料をもらえるみたいだし、お父さんとまた新たな場所で頑張っていくわ』


急に弾んだような声になる。

< 155 / 255 >

この作品をシェア

pagetop