溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
◇◇◇
『お母さんたち、もう諦めるわ』
実家から電話が入ったのは、今からシャワーを浴びようと洋服を脱ぎ始めたときのことだった。
「諦めるって、民宿のこと?」
一度脱いだTシャツに再び袖を通す。
『うん。周りはみんな立ち退きに賛成しているのに、うちだけ残っていてもどうにもならないでしょう?』
「……それはそうだけど」
確かに、一軒だけでどうにか阻止できるものでもない。
立ち退きを要請されている全戸が、一丸となって反対しているならまだしも。
「民宿はどうするの?」
『畳むしかないわね』
電話の向こうでお母さんの声が沈む。
『でも、結構高額な立ち退き料をもらえるみたいだし、お父さんとまた新たな場所で頑張っていくわ』
急に弾んだような声になる。