溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
でもそれはきっと、無理にそうしているのだろう。
電話の向こうの顔は、泣いているに違いない。
『ところで、美緒奈の方はどうなの? 仕事は順調?』
突然振られて言葉に詰まる。
異動が告示されたのは昨日。
まだ気持ちの整理はついていない。
『……美緒奈? なにかあったの?』
「あ、ううん。なにもないよ。大丈夫。頑張ってるから」
『そう? それならいいけど……』
「またなにか決まったら電話ちょうだい。引っ越しとかも手伝うから」
最後の方はなんとなく早口になる。
あまり話したくない内容から逃げたかった。
母との電話を切り、洗面台の上にスマホを置いた。
鏡に映るのは、ひどい顔の私。
ニッと口角を上げて笑ってみても、泣き笑いのさんざんな表情だった。
貼っていた首筋の絆創膏に目が留まる。
痛くないようにそっと剥がしていくと、赤い痕はすっかり消えていた。
京介さんと私を結ぶものは、これでなにもなくなった。
もしかしたら、ちょっと夢を見ていただけなのかもしれない。
生きる世界の違う副社長との恋は、私の勝手な妄想が作り上げたものだったのかも。
ナオミの存在が消えた今、彼と出会った事実も消えたように思えてならなかった。