溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
消したはずの“ナオミ”が顔をもたげそうになった。
そう簡単に消えるはずもないのだ。
パソコンのデリートのようにはいかない。
涼子さんのお店で会ったときに京介さんのお母様が言っていた、“大事な話”はこのことだったのかもしれない。
「そういえば前に噂でチラッと聞いたんだけど」
急に小声になったものだから、なになに?と、もうひとりの女子社員が先を急かすように聞く。
「キャプテンの井森さんって、ここへ来る前に副社長との縁談があったらしいよ」
「えー!? なにそれ! ここにいるってことは破談になったってことだよね? えー! いったいなにがあったんだろう」
「その辺のところは私も詳しくわからないんだけど」
井森さんに副社長との縁談が……?
それじゃ、彼女が前に噂になっていた女性だったのか。
京介さんと結婚の話が持ち上がるくらいなら、それなりの家柄に違いない。
でも、どうしてここで客室係として働いているのだろう。
ふたりが結びつく理由は見当もつかなかった。
エレベーターがチンと音を立て、社員食堂のある地下二階に着いたことを知らせた。
彼女たちが賑やかな声と共に降りていく。