溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「会場に入って来たときから、あっちへふらふら、こっちへふらふらと」
そんなに歩きまわったつもりはないが、ずっと観察されていたのかと思うと恥ずかしい。
副社長は笑いながら言った。
柔らかな笑顔だった。
社長の息子でありながら、それをひけらかすこともなく真面目で穏やかな人柄の副社長は、普段から社内での評判は上々。
三十三歳で独身ということもあり、女子社員からの人気も高い。
顔よし性格よし、そのうえ高収入なら、それも当然だろう。
ここだけの話、私も密かに憧れを抱いている。
といっても、現実的に好意を持っているというよりは、芸能人を好きなのと同じような感覚だ。
絶対的に手の届かない人。
それが芹川副社長だ。
何年か前に結婚話が持ち上がったことがあったが、いつの間にか立ち消えていた。
そんな人がいきなり私の前に現れ、私に話しかけている。
信じられない状況だった。
「よかったら、なにか食べませんか?」
副社長は絶やさず笑みを浮かべ、料理が並んだ方を指差した。
浮足立った心を必死に抑える。
とにかく、今はこの場をなんとかやりすごそう。