溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
湯気の向こうで井森さんが手をひらひらとさせた気配が見えた。
「ん、おいしい。やっぱり鍋はこれに限る」
次々と頬張ってはビールを飲む様子が伝わってくる。
私の異動の話題が出たことで、昼間見た、京介さんと亜樹のお見合いらしき場面を思い出してしまった。
どうして亜樹なんだろう。
そう思う次の瞬間には、別のことが浮かんでくる。
非の打ちどころのない亜樹は、彼にお似合いだ。
相反する想いが胸を苦しめた。
「ごめん、上川さん。なにか嫌なことを思い出させちゃったみたいで」
箸を持ったままボーっとしていたせいで、井森さんをもう一度謝らせてしまった。
「いえ!」
慌てて否定しながらも、暗い影はなかなか消えてくれない。
それどころか、胸に留めておくことが苦しくなってきた。
唯一、京介さんのことを話せた亜樹に言えなくなった分、行きどころがなくなってしまった。
「もしかして、口に合わない?」