溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「そんなことがあったんだ……」
放心しているように井森さんが宙へと視線を彷徨わせる。
「ごめんなさいね。無理やり話させるような形になっちゃって」
「いいえ。私も誰かに聞いてほしかったので……」
すっかり話したことで、ずいぶんと楽になったように感じる。
彼と亜樹の結婚は、今さら変わることじゃない。
どうにかしたかったわけじゃなく、私はただ誰かに聞いてほしかっただけなのだ。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
眼鏡のブリッジを持ち上げ、井森さんを見る。
「井森さんと副社長に結婚の話があったと聞いたんですが……」
井森さんは「あぁ、そのこと」とどこか照れ臭そうに笑った。
副社長に縁談が持ち上がったことは、その当時は私も耳にしていたが、その相手がこうしてル・シェルブル東京で働いているとは思いもしなかったのだ。
「上川さんが内緒の話をしてくれたから、私もしちゃおうかな」
少しおどけた様子でビールをひと思いに飲み干す。
お酒の勢いも少しだけ借りるようだ。