溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
甲板へ出ると、潮風が私たちの周りをぐるりと取り囲んでは吹き抜けていく。
春とはいえ風は冷たかった。
サラサラな栗色の髪を巻き上げられた副社長は、それでも凛として美しい。
自分の置かれている状況が、未だに信じられなかった。
雲の上の存在ともいえる副社長の隣にいる不思議。
夢でも見ているような展開だった。
テレビ番組の企画で、視聴者プレゼントと称して芸能人とのデートをしているような感じだ。
いくつかあるベンチのひとつに腰を下ろすと同時に、私の両肩に優しい重みがかかる。
副社長が自分のジャケットを脱いで私にかけてくれたのだ。
「あの……」
「少し寒いから」
「――でも、それじゃ芹川さんが」
ジャケットを返そうとすると、やんわりと手で制された。
「俺は大丈夫」
優しい笑みを返してくれた。
「……ありがとうございます」
こういう人のことをフェミニストと呼ぶのだろう。