溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
彼の方は当然ながら、私がナオミだとは気づかない。
プライベートの夜だったあのときとは違い、彼は表情を引き締めていた。
「みなさん、お忙しいところ、申し訳ありません」
副社長が律儀に頭を下げた。
「ひとつ提案したいことがあって、お時間を取っていただきました」
ゆっくりと話し出す。
私たち従業員に対してであっても丁寧な口調で柔らかく話すのは、副社長のいいところじゃないだろうか。
会社の上層部ともなれば、上から目線で物事を進める人の方が多い。
社長も副社長も、そういった点では物腰が柔らかくて、さすがは接客業のトップとも言われるホテルマンだと思わせる。
そういった態度で臨まれると、素直に話を聞こうという気分にもなる。
いつもより副社長のいいところが目につくのは、あの夜のせいなのかもしれない。
遠い存在の彼と、思いもしない時間を過ごしたからだ。
とはいえ今は仕事中。
ともすれば浮かれてしまう心を懸命に軌道修正し、副社長の言葉に耳を傾けた。
「仕事やレジャーで頻繁にホテルを利用する顧客は、型通りのサービスでは満足しません。彼らが求めているのは、ひとりひとりに合わせたサービスだということはみなさんもご承知かと思います」
副社長の口調に若干の熱が込められるのを感じた。