溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

「この頃、元気ないよね、副社長」

「うん。どこか身体の具合でも悪いのかな」


少し離れた洗面台にいた女子社員の会話が聞こえてきた。
鏡越しにチラリと見ると、それは秘書室のふたりだった。

“副社長”という単語に、あれからずっと私の耳は過剰に反応してしまう。
今もまた、瞬時に盗み聞きモードに入った。


「ほら、副社長ってプライベート仕様のスマホを持っているでしょう? あれを取り出しては、なにかを操作するわけでもなくじっと眺めたりして。ため息まで吐いたり」

「誰かからの連絡でも待っているのかな」


どうしたってドキッとしてしまう。
私ではない可能性だってあるのに。

鏡の中で亜樹と目が合った。
なにか言いたそうに、その瞳が揺れる。


「そうだとしたら誰なんだろうね。やっぱり女の人かな」

「そうなんじゃない? でも羨ましい。副社長にため息を吐かせるなんて」

「ほんと。どんな女性だろうね」


ふたりはしばらくその話題で盛り上がったあと、メイクポーチを持ってトイレを出て行った。

< 57 / 255 >

この作品をシェア

pagetop