溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「この頃、元気ないよね、副社長」
「うん。どこか身体の具合でも悪いのかな」
少し離れた洗面台にいた女子社員の会話が聞こえてきた。
鏡越しにチラリと見ると、それは秘書室のふたりだった。
“副社長”という単語に、あれからずっと私の耳は過剰に反応してしまう。
今もまた、瞬時に盗み聞きモードに入った。
「ほら、副社長ってプライベート仕様のスマホを持っているでしょう? あれを取り出しては、なにかを操作するわけでもなくじっと眺めたりして。ため息まで吐いたり」
「誰かからの連絡でも待っているのかな」
どうしたってドキッとしてしまう。
私ではない可能性だってあるのに。
鏡の中で亜樹と目が合った。
なにか言いたそうに、その瞳が揺れる。
「そうだとしたら誰なんだろうね。やっぱり女の人かな」
「そうなんじゃない? でも羨ましい。副社長にため息を吐かせるなんて」
「ほんと。どんな女性だろうね」
ふたりはしばらくその話題で盛り上がったあと、メイクポーチを持ってトイレを出て行った。