行雲流水 花に嵐
「ねぇ、その鶴吉っての、昔からよく来るの?」
「ううん。ほんとに最近来るようになったの。勝次があんまり向こうを空けられないとかで、最近あいつが来てる。でもやたら威張るし、前に勝手に三階に上がってね、で、あの子を見つけて痛めつけたの」
「痛めつけた?」
ぎょ、と片桐が目を剥いた。
「何かね、あの子のせいで、相棒が死んだとか喚いてたよ。簀巻きにしてやるとか息巻いてた」
「ははぁ、なるほど。で、あの子無事なの?」
どうやら鶴吉は太一を竹次の仇と思っているようだ。
---ま、確かに太一のことがあるから、宗ちゃんの手にかかったんだけどね---
何も知らない子供にそのようなことを言い、さらに手まで上げるとは。
鶴吉という奴は、竹次よりも粗暴なようだ。
「殴られたけど、大丈夫。でも怯えちゃって、帰りたがってる」
「ようやっと攫われたことに気付いたのかしらね」
「お家が厳しいのかもね。だって帰りたいってはっきり言ったの、今回が初めてよ。普通はおっかさんが恋しいものじゃないの」
「どうかしらね。まぁ武家だから、厳しくはあるかもだけど。あの子のおっかさん、優しそうでは……ないかなぁ」
う~ん、と首を傾げる。
太一のことで要蔵のところに来たお梅は、ただ暗い印象だった。
でも心配のあまり要蔵のところまでやって来たのは事実だ。
「表立っては甘やかさなかったのかもね。でも今回いなくなって、おっかさんの中でも子を想う気持ちが爆発したんだろうよ。太一の中でも今まで厳しくされ過ぎたから、もしかして自分はいらない子なんじゃないか、とかいう不安があったのかも。それで優しくしてくれる玉乃ちゃんたちに懐いた」
「ふぅーん。……そんなもんかい」
玉乃の声に棘が含まれる。
遊女にこの手の話は禁忌だ。
片桐は玉乃を抱き寄せた。
「玉乃ちゃんには、あたしがいるじゃない。ねぇ、本気であたしと逃げる気ない?」
「えっ?」
驚いた顔で、玉乃が片桐を見上げる。
「ううん。ほんとに最近来るようになったの。勝次があんまり向こうを空けられないとかで、最近あいつが来てる。でもやたら威張るし、前に勝手に三階に上がってね、で、あの子を見つけて痛めつけたの」
「痛めつけた?」
ぎょ、と片桐が目を剥いた。
「何かね、あの子のせいで、相棒が死んだとか喚いてたよ。簀巻きにしてやるとか息巻いてた」
「ははぁ、なるほど。で、あの子無事なの?」
どうやら鶴吉は太一を竹次の仇と思っているようだ。
---ま、確かに太一のことがあるから、宗ちゃんの手にかかったんだけどね---
何も知らない子供にそのようなことを言い、さらに手まで上げるとは。
鶴吉という奴は、竹次よりも粗暴なようだ。
「殴られたけど、大丈夫。でも怯えちゃって、帰りたがってる」
「ようやっと攫われたことに気付いたのかしらね」
「お家が厳しいのかもね。だって帰りたいってはっきり言ったの、今回が初めてよ。普通はおっかさんが恋しいものじゃないの」
「どうかしらね。まぁ武家だから、厳しくはあるかもだけど。あの子のおっかさん、優しそうでは……ないかなぁ」
う~ん、と首を傾げる。
太一のことで要蔵のところに来たお梅は、ただ暗い印象だった。
でも心配のあまり要蔵のところまでやって来たのは事実だ。
「表立っては甘やかさなかったのかもね。でも今回いなくなって、おっかさんの中でも子を想う気持ちが爆発したんだろうよ。太一の中でも今まで厳しくされ過ぎたから、もしかして自分はいらない子なんじゃないか、とかいう不安があったのかも。それで優しくしてくれる玉乃ちゃんたちに懐いた」
「ふぅーん。……そんなもんかい」
玉乃の声に棘が含まれる。
遊女にこの手の話は禁忌だ。
片桐は玉乃を抱き寄せた。
「玉乃ちゃんには、あたしがいるじゃない。ねぇ、本気であたしと逃げる気ない?」
「えっ?」
驚いた顔で、玉乃が片桐を見上げる。