行雲流水 花に嵐
「そ、それも私が直接交渉すれば解決することだ! そう思って自ら出向いたのではないか!」

「お前、自分がどこにいるのかわかっているのか? 蔵に閉じ込められて、何を交渉するってんだ。だがお前がそこで自害してくれれば、武士殺しで奉行所が動く。そうなると俺たちゃ労せず亀屋を潰せる。お前の借金もうやむやになろう。万々歳だ」

「私がいなくて上月家が立ちゆくと思うのか!」

「お前がいないほうが、全て上手く行くと思うが」

 淡々と言う宗十郎に、仙太郎は真っ赤な顔を格子に押し付けて憤慨していたが、不意に、はっとした顔になった。

「そうか。お前、私を消して上月の家に入る気だな」

 仙太郎の言葉に、宗十郎は大きく息を吸うと、これ見よがしにため息をついた。
 が、仙太郎にはその意味がわからない。

「昔からそれを狙っていたのだろう! 太一がお前に懐いたのも、その計画の一部だな? お梅も何かお前に肩入れするし、裏でどれだけ糸を引いてるんだ!」

「ほぉ、そうなのかい。お前、お梅程度の女にも愛想尽かされてるんだな。まぁわかるけど」

 けっけっけ、と馬鹿にしたように笑ってやると、仙太郎の額に青筋がびしびし立つ。
 わかりやす過ぎて面白い。

「おいっ。お前、こいつの身内なのか?」

 油断なく刀を構えたままの勝次が、ようやく口を開いた。
 話の流れで、二人の関係に見当をつけたらしい。

「不本意ながら。このカスと俺は、親父殿を同じにする。もっとも上月家がどうなろうと、俺は知ったこっちゃないが」

「とすると、ガキを連れ去ったのはお前か?」

「ああ。片桐は内偵だ」

 勝次の顔が悔しそうに歪む。

「……お前はこいつの兄弟とのことだが、上月家とは関係ねぇのか?」

「そうだな。俺は十年以上前に家を出た。単なる牢人だ」

「ならやっぱり、お前は生かしちゃおけねぇ!」

 叫ぶや、勝次は刀を突き出した。
 おっと、と宗十郎は身体を捻って避ける。

「りゃあ!」

 勝次は踏み出した足を軸に、反転しながら宗十郎の軌道を追った。

「うわっ」

 動いて避ける暇はない。
 宗十郎は、咄嗟に屈んで迫る刀を避けた。
 ぶん、と頭上を刀が通り過ぎた直後、地を蹴って後ろに飛ぶ。
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