行雲流水 花に嵐
「おっ。気付いたかい」

 宗十郎が言うと、おすずは、じぃ、と宗十郎を見た後、そろそろと手を伸ばした。
 そして宗十郎の袖を掴んだ。

「上月様……。本当に?」

「ああ。頑張ってくれたお前さんを、俺が放っておくわけないだろう」

 優しく言うと、またおすずは大粒の涙を流した。

「ごめんなさい……。あたし、下手打っちゃった」

「何、十分だぜ。十分よくやってくれたよ」

「あたしね、あいつがよく言う大親分のことを聞こうと思ったの。そのうち色町全体を仕切るだろうっていう奴。今色町を仕切ってるのは上月様がお世話になってる親分よね? なのにあんないかにも怪しい奴らが仕切るってどういうことかと思って。上月様にも困ったことになるんじゃないかと思ったから……」

 ほぅ、と宗十郎は、感心したように呟いた。
 この素人娘が、そこまで考えたのか。

「そうか。良い読みだぜ。そんで、何かわかったんかい?」

 宗十郎は、ごろりと横たわり、おすずを抱き寄せた。

「大したことはわかんなかった。でもそのうち亀屋に来るって。今は二条だか三条だか、結構遠いところにいるんだって」

「二条か三条辺りに家があるんかい? 何かやってるとか?」

「商売がどうのって言ってたから、お店をやってると思う。でも何してるのかを聞こうとして、疑われちゃって」

「そうか」

「ごめんね、あんまり役に立てなかった」

 腕の中で小さくなるおすずを、宗十郎は、ぎゅっと抱きしめた。

「い、痛い」

「あ、すまねぇ」

 慌てて腕を開いたが、離されるのは嫌なようで、おすずはぴたりと宗十郎の胸に引っ付いた。

「しかし、よくやってくれたよ。しかもお前さん、こんな痛めつけられても、俺のこと言わなかったそうじゃねぇか」

「だって、下手に上月様のこと喋って、上月様に危険があったら嫌だもの」

「いい女だよ、お前は」

 髪を撫でてやると、おすずは嬉しそうに宗十郎に抱きついた。
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