行雲流水 花に嵐
 呟くように言った勝次に、竹次は、ほっと胸を撫で下ろした。
 だが次の瞬間、勝次の手から匕首が飛ぶ。

「ぎゃあっ!」

 どす、と匕首が、竹次の足の甲に突き刺さった。
 悲鳴を上げた竹次が転がる。

「てめぇは、とっとと女を探しやがれ」

 冷たく言い、勝次は腰を上げた。

「とりあえず、例のお座敷にいる女郎をどっかに隠したほうが良くない?」

「そうだな。こいつが探し出すよりも、そっちのほうが早い。しかし女を移動させるとなると……」

 ちらりと勝次の視線が片桐に落ちる。
 そして、ぽん、と手を打った。

「旦那。ちょいと頼まれてくれねぇか」

「あたし?」

「ああ。旦那が先導してくれりゃ、女どもも大人しく従うだろ」

 むさい男に引っ立てられるよりも、見目良い男のほうがいい。
 しかも片桐は女子に優しい。
 心から優しいのかは疑問だが。

「いいけどぉ。竹ちゃんは一人でいいのぉ? 牢人に会ったら、ばっさり殺られちまうかもよ?」

「いっそのこと、ばっさり殺られちまえ」

 ふん、と鼻を鳴らし、勝次は部屋を出て行った。
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