拾われた猫。Ⅱ
勇の部屋に近づくと、中からトシの声がした。
「何度も言うが、あんたの所にあいつは行かねぇよ」
殺気立った声はいつものトシの冷静さを欠いていた。
ノアと顔を見合わせ、首を傾げた。
「これは私の意思だけではありませんわ。
私の父や母の意思でもあるのですよ。
あの人に会わせてもらえません?」
トシの声とは打って変わって、とても冷静で嬉々とした女性の声がした。
確かここは女の人の出入りには厳しかったはず。
「2人とも落ち着きなさい。
……菊さん、彼は無理に理由をつけても簡単に動く人では無い。
諦めてもらえないかい?」
落ち着き払う勇の声も聞こえる。
中で揉めているようだった。
その時、後ろに殺気を感じた。
反射的に拳をそのまま振り上げると、「ゴブッ」と音とともに顔に命中したようだった。
顔を抑えながらフラフラしていると、縁側から踏み外し、ドサッと大きな音を出しながら倒れた。