拾われた猫。Ⅱ



「雨ちゃん」



名前を呼ばれてハッとする。



木刀が激しくぶつかった。


不意打ちに耐えきれず、衝撃と一緒に後ろに飛び退いた。




「総司…、いつの間に。

っていうか、何でいるの?」

「仕事終わって道場来たら、雨ちゃんがいたから相手してもらおうと思って」



「はぁ…」と溜め息を漏らしながらも、私の胸はジリジリと熱い気がした。



総司は気づいているのかいないのか、ニヤリと笑ってまた仕掛けてくる。



合間にチラリと左之の方を見ると、翔の相手をしていた。



翔は何度も何度も倒されていた。



けれど、そこには違和感しかない。


何の違和感かは知れない。


何かが変だった。





「余所見してる暇があるんだね」



ハッキリと近くで聞こえた総司の声。

迫ってくる木刀。



すんでのところで避ける。



そんな攻防戦が何度か続いた。



< 104 / 305 >

この作品をシェア

pagetop