拾われた猫。Ⅱ
「雨ちゃん」
名前を呼ばれてハッとする。
木刀が激しくぶつかった。
不意打ちに耐えきれず、衝撃と一緒に後ろに飛び退いた。
「総司…、いつの間に。
っていうか、何でいるの?」
「仕事終わって道場来たら、雨ちゃんがいたから相手してもらおうと思って」
「はぁ…」と溜め息を漏らしながらも、私の胸はジリジリと熱い気がした。
総司は気づいているのかいないのか、ニヤリと笑ってまた仕掛けてくる。
合間にチラリと左之の方を見ると、翔の相手をしていた。
翔は何度も何度も倒されていた。
けれど、そこには違和感しかない。
何の違和感かは知れない。
何かが変だった。
「余所見してる暇があるんだね」
ハッキリと近くで聞こえた総司の声。
迫ってくる木刀。
すんでのところで避ける。
そんな攻防戦が何度か続いた。