拾われた猫。Ⅱ
「雨」
フワリと私の前に現れる神出鬼没な彼は少し困ったように笑っていた。
「相変わらずつれないな」
クスクスと笑って、跳ね上がって私を見下ろす。
琥珀色の彼は、急に表情を変えた。
「…そろそろ、お前自身が目覚める時だ」
「朝?」
「そうじゃない。
お前の中の力だ」
彼の言っている意味が分からない。
私の中の力。
彼が言っていることは才能とかそういう次元のことなのだろうか。
「……本当はもう少しだけ留めておきたかったがな」
私に手を伸ばして頭をゆっくりと撫でる。
「人間らしくなったな…」
優しい眼差しは私を映す。
内心でその優しさに戸惑ってしまう。
優しさは皆からたくさん貰った。
彼からの優しさも多分…変わらない。
変わらないはずなのに、どうしてこんなにくすぐったく感じるのだろうか。